――情動と気分とでは、気分のほうが注意を要する。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
なぜなら、
――気分のほうが、わかりづらいからだ。
と――
……
……
実際には――
もう一つ理由があります。
それは、
――気分は、行動や発言はもちろん、感覚や思考の全てに影響を及ぼすから――
です。
どういうことか――
……
……
気分は隠微で持続的です。
よって――
当人の精神的な営みの全部に、それとなく影響を及ぼし、かつ、その影響は、いつまでも尾を引くのです。
行動や発言、あるいは感覚や思考に及ぶ影響は、多発的で多面的です。
一方――
情動は顕著で突発的です。
よって――
当人の精神的な営みの一部に、あからさまな影響を及ぼしますが、その影響が、いつまでも尾を引くということは、ふつうはありません。
行動や発言、あるいは感覚や思考に及ぶ影響は、一時的で一面的です。
……
……
以上のことから――
情動に問題があったときには――
たとえ、その問題を見逃してしまったとしても、大して深刻にはならない――
といえますが――
気分に問題があったときには――
その問題を見逃していると、問題が積もりに積もっていき、やがて深刻になる――
といえます。
例えば――
情動が大きく変化しても――
その変化は一時的で一面的ですから――
自分にとって大切な人たちとの関係にヒビが入るということは、ほとんどありません。
――なんか、虫の居所が悪かったんだね。
と流してくれる――
一方――
気分が大きく変化すると――
その変化が多発的で多面的ですから――
自分にとって大切な人たちとの関係が永遠に失われるということが、よくあります。
――もう、あの人とは一緒にいられない。
と見切られる――
……
……
そのような意味でも――
気分は、情動より、格段に重要なのです。