――生命の起源
については、
――生命は、いかに誕生したか。
との問いが最も根源的に感じられますが――
案外――
それと同じくらい根源的に感じられる問いに、
――生命の誕生は本当に1回だけか。
があります。
……
……
今のところ――
人類は、生命が2回以上誕生したと考えられる根拠を1つも得ていません。
10日前の『道草日記』でも述べたように――
現在、地球上に生息している全ての生物種は――
共通の祖先から――おそらくは、たった1つの単細胞生物から――派生していると考えざるを得ないのです。
複数の祖先から派生していると考えると――
世代交代における遺伝の仕組みの類似性や体の部品である物質(タンパク質)の共通性などから、気が遠くなるくらい稀な偶然の一致を仮定しなければなりません。
では――
なぜ1回だけなのか――
……
……
実は、
――生命の起源
に関する2つの仮説、
――パンスペルミア説
ないし、
――化学進化説
のいずれを採るにしても――
この、
――なぜ1回だけなのか。
が――
重くのしかかってきます。
パンスペルミア説を採るならば、
――胚種は常に宇宙から降り注いでいたはずなのに、なぜ1回だけなのか。
と反論され――
化学進化説を採るならば、
――生命誕生の化学反応は常に起こりえたはずなのに、なぜ1回だけなのか。
と反論されます。
面白いことに――
パンスペルミア説でも化学進化説でも――
再反論の骨子は同じです。
それは――
例えば、
――生命は、この地球上で2回以上、誕生してはいるのだが、2回目以降に誕生した生命は、1回目に誕生した生命によって、直接的ないし間接的に駆逐されたと考えられる。
というものです。
――直接的に駆逐された。
というのは、
――1回目に誕生した生命によって直接的に危害を加えられ、死滅した。
ということであり、
――間接的に駆逐された。
というのは、
――1回目に誕生した生命が築き上げた生態系に適応できず、死滅した。
ということです。
……
……
以上のことが象徴しているように――
――生命の起源
に関する2つの仮説、
――パンスペルミア説
と、
――化学進化説
とは、
(一般に思われているほどには違わない)
と、僕は考えています。
正確にいうと――
(生命の誕生が1回だけにみえる理由を明らかにすることが何よりも重要だ)
と考えています。
いいかえるなら――
(生命の誕生が1回だけにみえる不可解さを考えたら、パンスペルミア説も化学進化説も同じようなもの――)
ということです。