マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

今川義元のこと(1)

 何かで失敗をしたばかりの人は――
 たぶん、今、

 ――逆境

 にあるでしょう。

 一方――
 何かで成功をしたばかりの人は――
 たぶん、今、

 ――順境

 にあるでしょう。

 人の本性を見極めようと思ったら――
 その人が、順境ではなく、逆境にあることを確認するのがよい――
 ということを――
 きのうの『道草日記』で述べましたが――

 これを踏まえるならば――

 人の本性を見極める上で最も大切なのは――
 その人が、

 ――失敗をしたばかり

 なのか、

 ――成功をしたばかり

 なのかを――
 見定めることです。

 ……

 ……

 僕は――
 歴史が好きで――

 しばしば――
 歴史上の人物について、今日までに語られていることを――
 いろいろと調べるのですが――

 やはり――
 その人物が、何か大きな成功をした直後ではなく、何か大きな失敗をした直後の行動のほうが――
 興味深く感じられます。

 大きな成功をした直後の行動は――
 そんなに面白いとは感じられないのです。

 とはいえ――

 ……

 ……

 その「何か大きな失敗」が、あまりにも大きすぎて――
 その直後の行動が存在しない――
 ということが――
 歴史上、しばしばありえます。

 つまり――
 その「大きな失敗」によって、命が断たれてしまった場合です。

 そのような事例の典型といえそうな人物がいます。

 日本の戦国期の武将・今川(いまがわ)義元(よしもと)です。

 ……

 ……

 ほとんどの人がそうであろうと思いますが――

 僕は今川義元のことを――
 織田信長の伝記で知りました。

 織田信長が同時代人から俄然注目を浴びるようになった契機は――
 桶狭間(おけはざま)の戦いです。

 その戦いに敗れたのが今川義元でした。

 桶狭間の戦いは――
 織田信長の視点でみたら、

 ――大きな成功

 です。

 が――
 今川義元の視点でみたら、

 ――大きな失敗

 でした。

 あまりにも大きすぎて――
 その後の今川義元の行動は存在しません。

 戦死したからです。

 ……

 ……

 (もし今川義元桶狭間の戦いで死んでいなかったら――)
 と――
 思うことがあります。

 僕は――
 今川義元という人物像に――
 強い関心をもっているのですが――

 それは――
 もし今川義元桶狭間の戦いで死ななかったら――
 その後、非常に興味深い行動をみせていたかもしれない――
 と思うからです。

 もちろん――
 その行動が、どんなものであったかは、永遠にわからないわけですが――

 その行動の評価が――
 今川義元の人物像の真価に直結することは間違いないでしょう。