マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

出アフリカに必要であったこと

 ――人の気分は、自分の生命が危険にさらされているとき、不自然に浮き上がる。

 という命題――
 すなわち、

 ――人の気分を司る第二原理

 と、僕が呼んでいる命題は――
 生物種としての人(ヒト)が、旧来の生息地を捨て、新たな生息地を目指して移住を試みるような場合に――
 有利に作用したのではないか――
 ということを――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 ……

 ……

 このような主張をする上で――
 僕が意識をしたのは、

 ――アフリカ単一起源説

 です。

 すなわち、

 ――ヒトはアフリカに出現し、その後、世界各地へ移住をしていった。

 という学説です。

 遺伝学的な根拠が提示されていることから――
 今日、自然人類学の主流の考え方になっています。

 このアフリカ単一起源説によれば――
 ヒトは、今から7万年ほど前に、おそらくはアフリカ大陸の東端の半島――「アフリカの角」と呼ばれる地域――から、海峡を経由して、ユーラシア大陸アラビア半島へ渡っていった――
 と考えられます。

 この移住は、

 ――出アフリカ

 と呼ばれています。

 いま、

 ――渡っていった。

 と一言で述べましたが――

 出アフリカは――
 実際には、そう簡単なことではありませんでした。

 彼らが渡っていったと考えられる海峡は――
 最も狭いところでも20㎞の幅があります。

 もっとも――
 当時は氷河期で海面が下がっていたことから、実際の幅は10㎞ほどと見積もられているようですが――

 それでも――
 7万年前のヒトの技術で、10㎞の海原を越えていくのは、並大抵のことではなかったはずです。

 出アフリカは、

 ――気分が不自然に浮き上がる。

 といった“異変”なしには――
 決して成し遂げられなかった決死行でしょう。