ヒトと風邪ウイルスとの関係を考えるのは――
けっこう面白いことです。
が――
考えの材料が、ちょっと多くありすぎて――
僕自身、まだ考えをまとめきれずにいます。
この5日間ほどの『道草日記』において――
ヒトと風邪ウイルスとの関係について述べたことのうち、
(あれとこれとは矛盾しているなぁ)
と思うことも少なくありません。
が――
この問題――
なぜか僕には面白く感じられるので――
もう一度、最初から考え直してみたいと思います。
まずは、
――ヒト
について――
……
……
いわゆる霊長類の共通祖先が地球上に出現したのは――
今から 1 億年ほど前と考えられています。
その共通祖先が進化的に分枝を繰り返し――
その“枝”の1つがヒトの祖先になったと考えられています。
ヒトの祖先が進化の“枝”として独立をしたのは――
だいたい 100 万~ 300 万年前と考えられているようです。
が――
この“枝”は決して現代に向かって1本で伸びてきたわけではありません。
諸説はあるようですが――
だいたい 10 ~ 30 本くらいの“枝”を出したようです。
そのうちの1本がヒト――つまり、現生人類――であると考えられます。
それら 10 ~ 30 本の“枝”は、生物分類上、1つの属を形成しているとみなされていて、
――ヒト属
と呼ばれています。
このヒト属に含まれる生物種の1つとして――
ヒトは――
今日でいうアフリカ大陸で――
だいたい今から 10 万~ 30 万年前に出現したと考えられています。
ただし――
この時点で――
ヒト属に含まれる生物種は、ヒト以外に 3 ~ 10 種類くらいは生息していたと考えられています。
今日でいうユーラシア大陸の西方――つまり、ヨーロッパ――に生息していたと考えられるネアンデルタール人は――
その代表例です。
ヒト属に含まれる生物種の1つにすぎなかったヒトは――
やがて――
あるときを境に――
劇的な進化を遂げます。
その進化の内実を一言で述べるのは難しいのですが――
それでも、あえて一言で述べるならば、
――人らしい社会性の獲得
でしょう。
ヒトは、あるときを境に、知識や発想を共有することで、他の生物種では考えられないほどに多数の個体で行動を共にするようになった、と――
考えられています。
せいぜい 30 ~ 100 体くらいで集まって暮らしていたところを、300 ~ 1,000 体、あるいは、それ以上の数――文字通り、桁違いの数――の個体で集まって暮らすようになったのです。
その結果――
ヒトは、ヒト属のなかで破格の生物種となりました。
その後――
ヒトは、アフリカ大陸からユーラシア大陸、アメリカ大陸へと広がっていきます。
この劇的な進化の起こった時期は――
だいたい今から 3 万~ 10 万年前と考えられています。
そして――
だいたい今から 1 万~ 3 万年前に――
ヒトは、ヒト属の他の生物種を直接的ないし間接的に絶滅へと追いやった上で――
ヒト属の最後の生き残りとして――
この地球上での繁栄を極めはじめます。
以上の経過を踏まえますと――
ヒトの起源に関する重要な見解が2つくらい得られます。
すなわち、
――ヒトは、いつからヒトになったのか。
ということに関する見解です。
1つは――
3 万~ 10 万年前、
――人らしい社会性の獲得
を遂げたあとでヒトになったという見解――
もう1つは――
1 万~ 3 万年前、
――ヒト属の最後の生き残り
になったあとでヒトになったという見解です。
僕は、ヒトの特徴の1つに、
――地球上の全域で生息している。
という点を挙げるのがよいと考えています。
この特徴が顕わになるのは――
ヒトが、ヒト属の最後の生き残りとして、繁栄を極めはじめた後です。
たとえ“人らしい社会性の獲得”を遂げた後であっても――
「地球上の全域で生息して」という条件を満たす前であれば――
それは、
――ヒト
とは呼べないのではないか――
そのように僕は考えています。