九鬼周造の「粋(いき)」は、
色気
勝気
心得
の3つの要素から成ると理解し得る、ということを――きのうの『道草日記』で述べました。
もちろん、
――色気
とは、「あからさまな色気」ではなく、
――滲み出る色気です。
また、
――勝気
とは、「周囲に撒き散らす勝気」ではなく、
――内に秘めた勝気
であり、
――心得
とは、「理屈を積み上げた心得」ではなく、
――体験に根差した心得
です。
いずれも一定の人生経験を糧としない限り、容易には獲得し得ない性質であろうと思います。
九鬼周造の素晴らしかった点は、この、
――粋
という日本固有の概念――曖昧模糊としていて雲をつかむような概念――を、西欧の哲学的な手法を用いて質そうとしたことです。
九鬼周造が昭和前期に質してくれたからこそ――
今日の僕らは、「粋」の概念を正しく把握することの意義を知ることができている――
それは、おそらくは、西欧の哲学的な手法だけを用いていたのでは、十分には把握できそうにないのですが、それでも――
把握しようとする営みに価値があることは十分に伝わっている――
九鬼周造の「粋」は、
――哲学で重要なのは、答えではない。問いである。
ということの意味を雄弁に物語っています。
ちなみに――
僕個人は、
――粋
とは、
――色気の嗜(たしな)み
である、と――理解をしております。
色気をただ楽しんでいたり、色気に振り回されたりしているのではなく、色気を嗜んでいるときに――
その人は、
――粋
なのです。