――「粋」がもつ嫌らしさ
について、きのうの『道草日記』で述べました。
それは――
一言でいえば、
――「粋」の断定性
です。
これは、
――「野暮」の婉曲性
と対を成しています。
きのうの『道草日記』で触れた掛け合い――
すなわち、
――よぉ! お姐さん、粋だねぇ!
――何いってんだい。往(い)きじゃないよ、帰りだよ。
という掛け合い――は、「粋」の断定性が、はからずも当の女性に対して牙を剥く事例です。
この場合は、「よぉ! お姐さん、粋だねぇ!」と声をかけた者――おそらくは、男――が、「粋」をよくわかっていなかったのであって――
もし、「粋」をよくわかっていたら、たとえ、どんなに「なんて粋な女性だ」と感じ入っても――
それを当の女性に面と向かって口にはしません。
心の中で、人知れず、しみじみと呟(つぶや)くか――
後刻、当人のいないところで、誰かに向かって、
――あれは、粋だったねぇ。
と、問わず語りに評するのがよいのです。