――病原体が体へ侵入をし、定着をしたからといって、必ずしも体が不具合をきたすとは限らない。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
そのことを端的に示す存在が、
――常在菌
です。
ヒトの個体に侵入をし、定着をしながらも、病原性は呈さない細菌――つまり、個体に何ら不具合をきたさない細菌――を指します。
個体とは一種の共生関係にあると考えられています。
その種類は数百に上り、かつ、その総数は個体を構成する細胞の総数を遥かに上回るようです。
この常在菌の存在を考慮に入れると、
――感染
や、
――感染症
の概念は、単純には理解できません。
きのうの『道草日記』では、
――病原体が個体の内部へ侵入をし、定着をすることを「感染」と呼び、その病原体が個体の内部で増殖をすることによって、その個体が特有の症状・徴候を発することを「感染症」と呼ぶ。
と述べましたが――
実際には、もう少し複雑な説明が必要で――
例えば、
――病原体が個体の内部へ、個体と常在菌との共生関係を乱さない程度に侵入をし、定着をすることを「感染」と呼び、その病原体が個体の内部で、個体と常在菌との共生関係を乱す程度に増殖をすることによって、その個体が特有の症状・徴候を発することを「感染症」と呼ぶ。
といった説明になるのです。
――共生関係を乱さない程度
とか、
――共生関係を乱す程度
とか――
ちょっと割り切れない表現が含まれていますね。
――共生関係
というのは――
つまりは、
――互いに助けあっている。
ということです。
このことは――
例えば、
――常在菌は、共生関係にある個体に対して病原性を呈しうる微生物を、積極的に駆除しているのかもしれない。
ということを意味しています。
そして、
――もし、その微生物を常在菌が駆除し損ねると、駆除されなかった微生物が個体に対して病原性を呈するだけではなくて、それまでは個体と共生関係にあった常在菌の一部が病原体と化し、個体に対して病原性を呈するのかもしれない。
ということも意味しています。
このように、
――感染、
や、
――感染症
の概念は、
――常在菌
の存在を考慮に入れると、まったく単純ではなくなります。
しかも――
今は、あえて、
常在菌 = 常在の細菌
として述べましたが――
実際には、
――真菌
や
――虫
も含まれます。
――真菌
とは、カビのことです。
そして――
おそらくは、
――ウイルス
も含まれます。
つまり――
ヒトの個体は、
――常在の細菌
だけではなくて、
――常在のカビ
や、
――常在の虫
そして――
おそらくは、
――常在のウイルス
とも共生関係にあるのです。