マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

国家の主治医

 疫病の蔓延に際し、いわゆるロックダウン(lockdown)をかけるかどうかは、

 (やはり、医師が責任をもって判断をするのがいいのではないか)

 と――

 僕は考えています。

 

 きのうの『道草日記』で――

 僕は――

 ロックダウンを、

 ――強い副作用を伴う劇薬の1つ

 に喩えました。

 

 “劇薬”の評価や運用に慣れているのは――

 何といっても、やはり医師です。

 

 利益と損害とを秤にかけ――

 つねに適切なバランスをとることが身にしみついています。

 

 もちろん――

 その医師は、政治家ではなく――

 政治家によって任命される官吏の立場がよいでしょう。

 

 いわば、

 ――国家の主治医

 という立場です。

 

 イギリスでは――

 コレラの蔓延を機に、

 ――Chief Medical Officer (主席医務官)

 という官職が19世紀に設置されました。

 

 これに相当する官職を備えた国家は、アメリカやカナダをはじめ、決して少なくないようです。

 

 が――

 日本には、ないといえます。

 

 少なくとも、

 ――国家の主治医

 と形容しうる決定的な裁量を与えられた官職は見当たりません。

 

 そうした官職がなかったことで――

 今般の新型コロナ危機に際し、日本国政府が思い切った政策を素早く打てなかった側面は否めません。

 

 ……

 

 ……

 

 “国家の主治医”が果たす役割とは何か――

 

 例えば、疫病について――

 感染がどこまで広まっているのか、その勢いはどれくらいなのか、そもそも、どんな特性のある感染症なのか――

 そういったことを医学的に――あるいは、公衆衛生学的ないし疫学的に――見極めた上で――

 的確な政策を短期間で練り上げ、政権首班に説き、裁可を仰ぐ――

 そういう役割です。

 

 当然ながら――

 そのような役割は一人では果たせませんから――

 配下に何人もの職員を抱えておく必要があるでしょう。

 

 つまり――

 何らかの常設の部局の長である必要があります。

 

 が――

 その地位は、少なくとも平時には、決して高くある必要はありません。

 

 ひとたび疫病が蔓延しかけたような乱時に限り、

 ――国家の主治医

 として、政権首班に直に語りかけることができれば――

 それでよいのです。

 

 任期は10年くらいが適当でしょう。

 あまり短いと、経験が蓄積されません。

 が、あまり長いと、権限が腐敗します。