マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

“アヘン問題への危機感”の本態

 ――アヘン戦争のときに、林(りん)則徐(そくじょ)が抱いたアヘン問題への危機感は、東アジアの全域はおろか、中国の全土へ広まることさえ、なかった。

 ということを――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 

 ここでいう、

 ――アヘン問題への危機感

 とは何か――

 

 ……

 

 ……

 

 いわゆる、

 ――アヘン問題

 の要点は――

 11月27日の『道草日記』で述べたように――

 イギリス商人が不当に売りつけていた麻薬アヘンによって、中国の全土の人々の心身の健康が損なわれ、社会の風紀が乱れていたこと、および、そのアヘンの買い付けと引き換えに、皇朝・清の基軸の財貨であった銀が西欧へ大量に流出をしていたこと、の2点でした。

 

 が――

 それは、アヘン問題の表層といってよいでしょう。

 

 ――アヘン問題

 には深層があります。

 

 それは、

 ――西欧による東アジアへの敵対的進出

 という深層です。

 

 ――敵対的

 がキツすぎるなら、

 ――非友好的

 に改めましょう。

 

 イギリス側は、中国側と仲良くしたくて、アヘンを売りつけていたわけではありません。

 ただ、自分たちの国益を追い求めた結果、アヘンを売りつけるに至りました。

 

 よって、

 ――東アジアへの敵対的進出

 は、あくまでも結果であって――

 例えば、

 ――イギリス政府による外交方針

 といった明確な原因に端を発していたわけではありません。

 

 つまり、

 ――西欧による東アジアへの敵対的進出

 を、

 ――西欧による東アジアへの侵略

 といいかえることは――

 少なくともアヘン戦争が始まる直前――19世紀の序盤――までにおいては――

 少し無理があったのです。

 

 が――

 結果として、そうなっただけにせよ――あるいは、意識的ではなかったせよ――

 イギリス側によるアヘンの売りつけは、明らかに中国側に対する敵対性を帯びていました。

 

 この、

 ――西欧の敵対性

 に一早く気づいて備えることができなかったということ――

 そのことの認識が、

 ――アヘン問題への危機感

 の本態です。

 

 この危機感が、中国の全土の人々の間で円滑に共有をされることがなかった、という事実――この歴史的な事実が、アヘン戦争の災禍をいっそう際立たせているように――

 僕には思えます。