マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

1か月分の記憶をなくしていると……

 昨夜、夢をみました。

 

 僕は、中国地方で――たぶん、岡山や兵庫あたりで――精神科医をやっていて――

 四国に――たぶん、愛媛か高知あたりに――出張に来ていました。

 

 そのときの僕は、どういうわけか疲れていて――

 主張の用事を済ませ、広島経由で自宅のある岡山か兵庫に戻っていました。

 

 季節は冬――12月の下旬――年の瀬でした。

 

 時刻は午後の遅い時間――だいたい3時頃――でした。

 

 (家に帰ったら、あれをしなければならない、これもしなければならない……)

 ということを――

 乗り物に揺られながら延々と考えていて――

 何となく憂鬱な気分になっていました。

 

 やがて――

 乗り物から降り、道を歩いていくと――

 田んぼに囲まれた集落がみえてきて――

 それらのうちの一軒の庭先で、10歳くらいの男の子たちが、地面に方陣のようなものを棒で描き、古風な毬をついて遊んでいました。

 

 「入りなよ」

 と、誘われたので――

 その方陣の中に入り――

 男の子たちの説明に耳を傾けました。

 

(だいたいルールはわかった)

 と思った時点で、

「じゃあ、始めるよ」

 と、男の子たちがいったので――

 その古風な毬をつく遊びに、僕は混ざりました。

 

 ひとしきり遊んだ後――

 ふと気になって――

 服のポケットに入れていた携帯電話を取り出し、時刻を確認すると――

 午前10時でした。

 

 (おかしい。さっきまで午後3時だったのに……)

 

 僕は、昨日の午後3時頃から今日の午前10時頃まで、自分の記憶がとんでいると考えました。

 

 すぐに、

 (解離性遁走か)

 と思い当たりました。

 

 ――解離性(かいりせい)遁走(とんそう)

 というのは――

 簡単にいうと――

 強い精神的ストレスにさらされ続けることで起こるとされる記憶喪失の1つです。

 

 本人は、意図的に家庭や職場を離れて旅行に出かけているのですが――

 その間の記憶が――だいたい1~3日くらいの記憶が――とんでしまうのです。

 

 ところが――

 本人の周囲の人たちからは、まさか記憶がとんでいるとは思われず、まったく普通に旅行をしているように思われています。

 

 はた目には、まったく正常な状態にしかみえないのです。

 

(そんな患者さんを何人か診たことはあったが、まさか自分がなるとは……)

 

 驚きに、いくらか狼狽をしながら、

(そうだ、まずは家と勤め先に連絡を入れないと……!)

 と思い、すぐに気を取り直して、もう一度、携帯電話を手に取ったときに――

 

 僕の方へ、見ず知らずの大人の女性が近づいてきて――

 こういうのです。

 

 「今は、もう1月ですよ」

 と――

 

 その女性は看護職用の白いユニフォームを着ていました。

 

 携帯電話で日付を確かめると――

 たしかに、日付は1月の下旬でした。

 

(……ということは、僕は1か月分の記憶がとんでいるのか……)

 

 愕然として、無言で立ちすくみました。

 

 何をどうしたらよいのか――

 すっかり、わからなくなりました。

 

 1か月分の記憶をなくしていると気づいたのですから、当然ですね。

 

 ……

 

 ……

 

 そこで――

 目が覚めました。

 

 覚めた後も――

 しばらく枕もとの携帯電話に手を伸ばせませんでした。

 

 もし、きょうの日付が「3月8日」でなかったら、

 (どうしよう?)

 と思ったからです。

 

 そのまま二度寝をし――

 もう一度、目が覚めてから――

 枕もとの携帯電話に手を伸ばし――

 きょうが3月8日であることを確かめました。

 

 ……

 

 ……

 

 自分がみた夢のことを『道草日記』に書く気になったのは――

 

 きのうまでの『道草日記』で、

 ――ケレン味

 について述べていたからです。

 

(物語のケレン味って、何だろう?)

 ということを――

 けさ二度寝から覚めた後――

 小一時間くらい考えてみました。

 

 ……

 

 ……

 

 その結果は――

 あすの『道草日記』で――