マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

自然科学の証明の本質の傍らにある

 自然科学では、

 ――AはBである。

 という仮説の妥当性を示すときに――

 その否定形である、

 ――AはBでない。

 の仮定が成り立つとみなした上で、実験や観測を繰り返し――

 何か決定的な矛盾が生じないかどうかをみる――

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 つまり――

 自然科学の証明の本質は、

 ――否定

 にあるのですね。

 

 アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)の相対性理論(the theory of relativity)は、

 ――エーテル(ether)

 の存在の否定から生まれたといわれます。

 

 ――エーテル

 というのは、光を伝える仮想上の媒質のことで――

 その存在は、19世紀までは多くの科学者たちによって信じられていました。

 

 ――空間はエーテルで満ち溢れているから光は空間を伝わるのである。

 と考えられていたのです。

 

 この仮想上の媒質のことを詳しく調べてみようという発想の下に、様々な実験や観測が行われた結果――

 深刻な矛盾が生じたために――

 

 ――空間はエーテルで満ち溢れているとはいえない。

 と考えられるようになり――

 ひいては、

 ――エーテルは実は存在をしていない。

 との仮説が示されたのです。

 

 この仮説は今日でも主流を占めています。

 

 こう述べると、

 ――エーテル

 という概念が、ひどく低級で無骨に感じられるかもしれませんが――

 そうではありません。

 

 ――エーテル

 は、19世紀までに大勢の科学者たちに信じられていたにも関わらず――

 その存在が実験ないし観測によって明確に否定をされたという経緯のために――

 今も科学史に痕跡を残しています。

 

 ――エーテル

 という概念は――

 たしかに今日では、ほとんどの科学者に見向きもされない概念となりましたが――

 その鮮やかな否定のされ方は、十分に高級で洗練をされていました。

 

 その意味で、

 ――エーテル

 には、紛れもなく、ある種の、

 ――荘厳さ

 があり――

 それは、自然科学の証明の本質の傍らにあります。