マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

虫愛づる姫君:普遍的な問題を不完全ながらも扱っている

 短編物語集『堤(つつみ)中納言物語』の一編、

 ――虫愛づる姫君

 は、

 ――同時代の慣習や通念に非合理性を見出したときに、人は、どのように対処をするのがよいのか。

 という問題と、

 ――この「虫愛づる姫君」の物語をどのように盛り上げて、どのように終わらせるのがよいのか。

 という問題との――

 2つの問題の提起を行っている、という点で、

 ――いかにも古典らしい。

 といえる――

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 ――同時代の慣習や通念に非合理性を見出したときに、人は、どのように対処をするのがよいのか。

 という問題は――

 21世紀序盤の現代を生きている僕らにとっても、なかなかに新しく感じられます。

 

 実際には、まったく新しくはないのですね――『堤中納言物語』が成立をしたのは、平安後期から鎌倉前期にかけてと考えられています。

 ただし、各編の成立年代は揃っていないとみられていて、「虫愛づる姫君」は比較的に新しい時代に書かれたと考えることもできるようです――今日に伝わっている『堤中納言物語』の原書が、いずれも江戸期の写本であることから、どんなに新しくても、江戸期以前には「虫愛づる姫君」の物語が紡がれていたと考えられます。

 

 つまり、

 ――同時代の慣習や通念に非合理性を見出したときに、人は、どのように対処をするのがよいのか。

 という問題は――

 ざっと 300 ~ 1,000 年くらい前から既に人々の主要な関心事の1つであったらしい――

 ということです。

 

 それだけ――

 この問題が普遍性を帯びていた――

 ということになります。

 

 そのような問題を、不完全ながらも、扱っているという点で、

 ――虫愛づる姫君

 は、

 ――いかにも古典らしい。

 といえます。