短編物語集『堤(つつみ)中納言物語』の一編、
――虫愛づる姫君
の主人公・虫好きの姫について美化をするならば、
――虫愛づる姫君
が純粋に虚構の物語であるという束縛条件を振り解いてしまうか緩めてしまうかすればよい――
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
では――
どうすれば――
この束縛条件を振り解いたり緩めたりすることができるでしょうか。
……
……
振り解くには――
虫好きの姫が実在の人物であったことを史学的に示すしかありません。
つまり、
――虫愛づる姫君
というのは、実在の人物を後世に伝えている史料であり――
その描写は、その人物に対して批判的であった作者によって――正確には「筆者によって」――相当に歪められている――
と説いていくのです。
9月29日の『道草日記』で述べたように――
虫好きの姫のモデルになった可能性のある人物というのが、指摘をされています。
平安後期の公卿・藤原宗輔(ふじわらのむねすけ)の娘です。
よって――
虫好きの姫が歴史上に実在をしていた人物であることが史学的に示される可能性は、
――ないことはない
といえるのです。
少なくとも、
――絶望的ではない。
とはいえます。
が――
藤原宗輔自身の史料は、藤原宗輔が政権の中枢の近くにいたこともあって、かなり豊富に残っている一方――
その娘の史料は、それほど豊富には残っていないようです。
何か新たな史料が膨大に発見をされ――
その中で藤原宗輔の娘のことが詳細に言及をされていることが確認でもされない限り、
――虫愛づる姫君
の主人公・虫好きの姫が、藤原宗輔の娘の為人(ひととなり)を後世に少なくとも部分的に伝えていることを史学的に示すのは――
きわめて困難でしょう。
……
……
――虫愛づる姫君
が純粋に虚構の物語であるという束縛条件を振り解くのは、きわめて困難です。
では――
緩めるのは、どうでしょうか――
続きは、あす――