短編物語集『堤(つつみ)中納言物語』の一編、
――虫愛づる姫君
の主人公・虫好きの姫について、
――変に美化はしないほうがよい。
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
簡単にいうと、
――虫愛づる姫君
の作者は、主人公・虫好きの姫を、どちらかといえば否定的な筆致で描いていることから――
虫好きの姫のことを、
――優れた自立心・自律心・探求心の持ち主
と肯定的に捉えることには慎重になるのがよい――
ということです。
いいかえると、
――虫愛づる姫君
は純粋に虚構の物語と理解をされていることから――
作者による主人公・虫好きの姫への否定的な評価は、“創造主の裁定”のごとく絶対的であるとみなさざるをえない――
ということです。
この束縛条件は、
――虫愛づる姫君
を純粋に虚構の物語とみなす限り――
どこまでも、ついてきます。
よって――
虫好きの姫を、安易に、
――優れた自立心・自律心・探求心の持ち主
と肯定的に捉えることは、
――21世紀序盤の価値観を不用意に差し挟んだ誤読に過ぎない。
と一刀両断にされる可能性があるのです。
こうした懸念に配慮をせずに――
いくら、
――虫好きの姫は、自分のことは自分で決め、つねに理知的に発言をし、合理的に行動をしようとする自立心や自律心に富んだ女性であった。
とか、
――虫好きの姫は、自分の感性を信じ、予断や偏見をもたず、つねに物事の根源を探ろうとする探求心を備えた女性であった。
とかいった解釈を並べても――
それは、
――理屈が通らない美化
に他なりません。
虫好きの姫について、
――変に美化はしないほうがよい。
と僕がいっているのは――
そういう意味です。
にもかかわらず――
虫好きの姫の美化を試みたいと思う場合は――
どうするか――
……
……
もちろん、
――虫愛づる姫君
は純粋に虚構の物語と理解をされている――
という束縛条件を振り解けばよいのです。
振り解くことが難しければ――
少し緩めればよい――
……
……
この続きは、あす――