短編物語集『堤(つつみ)中納言物語』の一編、
――虫愛づる姫君
の主人公・虫好きの姫は、
――武家の棟梁
と出会い、旅立つべきであった――
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
出会って、旅立って――
どうなるべきであったのか――
きのうの『道草日記』で述べたように――
虫好きの姫は平安後期の女性ですから――
後世の僕らの視点でいえば――
虫好きの姫は、公家社会から武家社会への変革期の最前線に向かい、その激動の争乱を内部から窺うのがよいように思えます。
が――
それだと、虫好きの姫の“虫好き”の性質が物語の展開の中に巧く取りこめません。
公家社会から武家社会への移行に、
――虫
は関連をしないからです。
では――
どうするか――
……
……
例えば、
――蝗害(こうがい)
です。
――蝗害
とは、
――バッタ類の大量発生
によって起こる災害のことです。
大量発生をしたバッタ類が、あらゆる草木を食い尽くしてしまうので、飢饉となります。
中国大陸では蝗害が頻繁に発生をしていたようで――
為政者たちの悩みの種の1つでした。
日本列島では、広大な平原が殆どないという地形上の特徴から、蝗害の発生は頻繁ではなく――
発生をしても小規模にとどまったようです。
が――
蝗害は、虫好きの姫の物語にとっては、格好の素材でしょう。
虫好きの姫が、武家の棟梁と出会い、九州へ旅立つ――
そこで、これまでに知られていなかった大規模な蝗害が発生をする――
虫好きの姫は、その武家の棟梁と共に、この問題の対処に乗り出す――
すると――
九州の地で大量発生をしたと思われていたバッタ類は、実は中国大陸の由来であり、朝鮮半島を経て日本列島へやってきていたことがわかる――
中国大陸で何が起こっているのか――
虫好きの姫は、渡航の禁を破り、朝鮮半島を通って中国大陸へ赴き――
そこで蝗害の発生の根源的な原因を探る――
そんな筋書きが考えられます。