ほとんどのヒトは、生物として、生まれつき子どもを大切にあつかうようになっているけれども――
ほとんどのヒトは、生物として、生まれつき親を大切にあつかうようにはなっていないために――
人の世の中では、
――親孝行(おやこうこう)
という言葉が長らく必要とされてきた一方で、
――子(こ)慈育(じいく)
という言葉は長らく必要とされてこなかったのではないか――
と、きのう、のべました。
もう少し、簡単(かんたん)に、のべますと――
親にとって子どもは、かなり特別な人であるけれども――
子どもにとって親は、そこまで特別な人ではない――
ということです。
もちろん――
例外はありますよ。
なかには――
自分の子どもを“特別な人”とはみなせない親もいるでしょうし――
自分の親を自分の子どもと同じくらいに“特別な人”とみなせる子どももいるでしょう。
が――
そういう人は決して多くはない――
ということなのです。
例外はある――
けれども、おおまかな傾向(けいこう)として――
親は子どもを特別とみなし――
子どもは親を特別とはみなさない――
そういうことです。
……
……
親が子どもを特別とみなすのは――
きのうも、のべた通り、
――本能
つまり、
――生き物が生まれつきもっている力
に、もとづいていると考えられます。
このような力をもっているからこそ――
親は、子どもを特別とみなし、自然と慈育(じいく)に励(はげ)めるのですね。
その結果――
人は、自分の子孫をより確(たし)かな形で残すことができて――
ヒトは、生き物として、この地球上に生き残ることができる――
……
……
このような、
――子孫を残そうとする力
は、ヒトに限(かぎ)ったことではないようです。
ほとんどの生き物がもっていると考えられています。
その“力”の出し方は、生き物によって、それぞれにちがっていますが――
目的は、すべて同じ――子孫を残すためです。
『10 歳の頃の貴方へ――』