人の世の中は、たくさんの約束事から成り立っている――
と、きのう、のべました。
それら約束事が、人の世の中には十分に行きとどいているために――
お金(かね)をもって、お家(うち)に入っていれば――
どうとでも生きていくことができます。
少なくとも――
生きていくのが、どうしようもなく大変――
ということはありません。
なぜかといえば――
人の世の中には――
売り買いに関わる約束事が十分に行きとどいていて――
お金(かね)をもっていれば、食べ物や飲み物を手に入れられるからであり――
また――
危険を取りのぞく約束事も十分に行きとどいていて――
お家(うち)に入っていれば、とりあえずは安心をしていられるからである――
と、いえます。
これら約束事の一つひとつが――
人の世の中を人の世の中らしくしています。
が――
ここで注意をしておきたいことがあります。
約束事というのは、目に見えません。
何か実体があるわけではない――
つまり――
人の世の中を人の世の中らしくしていることには――
実体がないのです。
約束事というのは――
人と人とが取りかわします。
そして――
人と人とによって、とりかわされた後――
それぞれの人の心の中に、とどめおかれるのです。
つまり――
約束事というのは、人の心の中にある――
よって――
人の世の中を人の世の中らしくしていることというのは――
すべてに実体がなくて――
どれも、人の心の中にしかないことなのですね。
もう少し、わかりやすくいうと――
人の世の中には実体がなくて――
それゆえに――
人の世の中は人の心の中にしかない――
ということです。
『10 歳の頃の貴方へ――』