人の世の中は人の心の中にしかない――
と、きのう、のべました。
ここでいう、
――人の世の中
というのは、
――社会
という言葉と――
だいたい同じ意味です。
――社会
という言葉の意味には、さまざまな説明が付けられるものですが――
ぼくは、
――ある約束事を取りかわしている人たちが集まって生きている様子
と説明をしています。
つまり、
――社会
を根本的に形づくっていることは、
――約束事
なのです。
取りかわされている約束事が別々(べつべつ)なら、社会は別々です。
取りかわされている約束事が別々でありながら、社会は同一である――
ということは、ぜったいにありません。
また――
社会が別々でありながら、取りかわされている約束事は同一である――
ということも、ふつうは、ありません。
いま、
――ふつうは――
と付け足したのは――
ひょっとすると、ものすごい偶然(ぐうぜん)が起こっていて、まったく別々の社会でありながら、取りかわされている約束事は、どういうわけか、同一である――
ということが――
ぜったいにないとは、いえないからです。
とはいえ――
そのような偶然は、実際(じっさい)には、まず起こらないでしょう。
ところで――
……
……
この、
――社会
と同じような意味の言葉に、
――生態(せいたい)
があります。
――生態
とは、
――生き物たちが集まって生きている様子
です。
これに対し、
――社会
とは――
先ほど、のべたように、
――ある約束事を取りかわしている人たちが集まって生きている様子
です。
つまり、
――生態
というのは、ヒトだけでなく、あらゆる生き物でみられるのに対して、
――社会
というのは、ヒトだけでしかみられない――
ということです。
さらにいえば、
――約束事を取りかわす生き物としての人――つまり、ヒト――だけでしかみられない生態
それが、
――社会
なのです。
要するに、
――社会
とは、
――ヒトに固有の生態
です。
『10 歳の頃の貴方へ――』