この先――
あなたが算数・数学の勉強を一生けん命にやっていけば――
いつか、
――鉛筆(えんぴつ)をもっている手が勝手に動いて、なぜか答えを出せてしまった。
という体験をするでしょう――
と、きのう、のべました。
なぜ――
そんなことが起こりうるのか――
ふしぎに思った人もいるでしょうね。
実は――
人が、
――数や形
を扱うときと、
――体の動き
を扱うときとで――
その人の脳(のう)の働いている部分が少し重なっているらしい――
ということがわかっています。
その部分は、
――小脳(しょうのう)
と呼(よ)ばれる部分をふくんでいるらしい――
ということも、わかっています。
もう少し、くわしくのべましょう。
……
……
ヒトの脳は、
大脳(だいのう)
小脳
脳幹(のうかん)
の3つの部分に分けられます。
これらのうち、
――脳幹
は、少し特別で――
体が生きていくために必要な働き――例えば、息を吸(す)ったり吐(は)いたりすることとか、血を体中に巡(めぐ)らせることとか、食べた物を体の中に取りこむこととか――を担(にな)っています。
心の働きを担っているのは、
――大脳
と、
――小脳
との2つの部分です。
これら2つのうち、
――大脳
は、心の働きの大部分を担っています。
とくに意識的(いしきてき)な働きは、ほとんどが大脳が担っていると考えられます。
一方、
――小脳
は、心の働きのうち、主に、
――体の動き
に関わることを担っていると考えられています。
それらの多くは無意識的(むいしきてき)であることが特徴(とくちょう)です。
このようにのべると、
――意識的な働きは大脳で、無意識的な働きは小脳だ。
と、つい考えたくなりますが――
そうとはいえなくて――
実際(じっさい)には、
――大脳
も無意識的な働きを数多く担っていると考えられるので――
話は、かなり複雑(ふくざつ)なのです。
そこで――
もう一度――
あの喩(たと)えを思い出してみましょう。
――算数・数学
は、
――脳の窓(まど)
である――
という喩えです。
この喩えでは、
光:言葉の意味
音:人の気持ち
風:数や形に関わる情報(じょうほう)
でしたね。
これら3つのうち、
――光――言葉の意味
や、
――音――人の気持ち
は、ほとんど、
――大脳
とだけ関わっていると考えられています。
一方、
――風――数や形に関わる情報
は、
――大脳
と、
――小脳
との両方に関わっていると考えられています。
よって、
――体の動き
を扱うときと、
――数や形
を扱うときとで――
脳の働いている部分が少し重なっている――
と考えることができるのです。
『10 歳の頃の貴方へ――』