マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

身体の機能も自我に劣らず不思議――

 ――夜などに宙を舞う炎

 を目の当たりにしたら――

 たいていの人は驚く。

 

 そうした人たちの殆どは、

 「人魂だ!」

 と、いって驚く。

 

 が、

 ――人魂だ!

 と、いって驚く前に――

 単に炎が宙を舞っていること自体に驚く者もいる。

 

 実は――

 本来は――

 そうである。

 

 何の話か。

 

 ……

 

 ……

 

 むろん、

 ――精神の比喩

 の話である。

 

 ――夜などに宙を舞う炎

 を、

 ――身体の機能

 と、みなし、

 ――人魂

 を、

 ――自我

 と、みなす時――

 殆どの人は、自我の不思議さに注意を奪われる。

 

 が――

 身体の機能も、また――

 自我に劣らず不思議なのである。

 

 少なくとも――

 炎が宙を舞っている様子と同じくらいには不思議である。

 

 むろん――

 身体が機能を発している様子には――

 誰も驚かぬ。

 

 身体が食事をしたり、呼吸をしたり、歩行をしたり、跳躍をしたりしていても――

 別段、驚かぬ。

 

 が――

 実は――

 それは――

 炎が中空で燃え続けたり、動き回ったりするのと同じくらいに――

 驚きの事実である。

 

 ただの有機物の塊である身体が――

 なぜ食事をしたり、呼吸をしたり、歩行をしたり、跳躍をしたり、できるのか。

 

 ……

 

 ……

 

 それを不思議とも思わぬのは――

 自分自身の身体が日頃それら機能を発しているからに過ぎぬ。

 

 人魂とて、同じであろう。

 

 彼らが、

 ――夜などに宙を舞う炎

 をみても何ら驚きはすまい。

 

 自分自身が日頃、炎として宙を舞っているからである。

 

 が――

 身体が機能を発している様子をみたら――

 酷く驚くのではないか。

 

 ――なぜ有機物の塊が、食べたり、歩いたり、できるのか。

 と――

 

 『随に――』