サッカーの試合をみていて感じたのですが――
サッカーには日本人の美徳が通用しないのですね。
野球には通用します。
例えば、
――「皆で繋ぐ」の精神
は野球では好まれます。
ノーアウト2塁で4番バッターが打席に入るとしましょう。野球ファンは、
――ここは後ろに繋げ。
と感じます。ゲームが終盤なら、なおのことです。
強引に打ちにいって内野フライというのでは良質の野球とはいえません。1、2塁方向に打球を運び、最低でも2塁ランナーを3塁に進めようとするのが良いのです。
が、サッカーは違います。
――「オレが決める」の精神
が好まれます。
フォワードがドリブルでゴール前に押し寄せたとします。サッカーファンは、
――ここでシュートだ。
と感じます。ゲームの終盤なら、なおのことです。
背後から走り込んでくる味方にパスを出すのでは良質のサッカーとはいえません。失敗を恐れず、自らシュートを打つのが良質のサッカーです。
この違いは、どこからくるのか――
すぐに思い付くのは、持ち場の問題です。
野球では打順や守備位置が固定されます。持ち場が固定されるのですね。
が、サッカーでは固定されません。ボールは、誰が、いつ触ってもよい――フィールドでの位置取りも自由です。
ゲームの進行形式にも見逃せない特質があります。
野球では両チームに平等の機会が与えられます。が、サッカーでは平等の時間が与えられる――
野球で「後ろに繋ぐ」とは機会の節約を意味します。「強引に打ちにいく」は機会の浪費です。
逆に、サッカーで「自らシュートを打つ」とは時間の節約を意味します。「パスを出す」は時間の浪費です。
野球では、
――オレが決める!
はタブーとなりますが、サッカーはならない――むしろ、スローガンとなる――
こうしてみてみると――
野球とサッカーとで、どちらが、より日本人に向いているかは明らかでしょう。
日本のサッカーが強くなるには――
日本人の美徳を活かす新奇のスタイルを考案するか、日本人の美徳を捨て去る決断を下すか、しかありません。
どちらが、いいのでしょう。
もちろん、短期的には後者です。
が、長期的には前者でしょう。
――前代未聞のサッカーを目指す。
ということになります。