一発勝負の恐さは、しばしば妙な格言と関連づけて理解される。
曰く、
――強いチームが勝つのではない。勝ったチームが強いのだ。
という格言だ。
実際は、
――強いチームが勝つとは限らない。弱いチームが勝つこともある。
である。
とくに野球の場合は、そうだ。
*
アジア・シリーズが閉幕した。
今日の決勝戦で、日本球界を代表した北海道日本ハム・ファイターズが、台湾球界を代表したラニュー・ベアーズを破り、アジア王者に輝いた。
決勝戦は1試合である。
たった1試合で優劣をつけるシステムには、野球の特質が反映されていない。
日本のプロ野球を例にとると――
例えば、年間140試合前後を、4勝3敗のペースで消化すれば、リーグ優勝で、3勝4敗のペースで消化すれば、リーグ最下位である。
4勝3敗と3勝4敗とである。
サッカーでいえば、大した違いではない。
が、野球では大した違いとなる。
野球では、優勝チームが最下位チームに3回は負けても4回は勝つものなのだ。
*
今日のアジア・シリーズの決勝戦は、逆の結果になってもおかしくはなかった。
力の差はあった。
例えば、台湾のベアーズの守備は、日本のプロのレベルに到達しているとはいいがたい。
もし7回対戦すれば、先に4勝をあげるのは、間違いなくファイターズである。
が、対戦が1回ならば、話は別だ。
ベアーズの勝つ確率は、7分の3くらいはあったとみてよかった。
そうした中で、ファイターズはキッチリと勝った。
これは、スゴいことである。
プロ野球の歴史は、日本が台湾の数倍の長さを誇る。
だから、
――勝って当然――
と、いわれたりもする。
が、そういう発言を真に受ける人は、野球の特質を知らないといってよい。
アジア・シリーズを、今の一発勝負の形式で維持するならば――
台湾や韓国のチームがアジア王者の座を奪う可能性は、決して低くない。
アジア・シリーズは、真に価値のある大会に育てることを目標に、去年から始められた。
それを本気で目指すのなら、いつかは一発勝負に見切りをつけねばならぬ。
予選リーグをホーム&アウェイで闘い――
決勝は7回戦制とするのが理想であろう。
ただし――
今のアジア・シリーズの方式も、捨てたものではない。
台湾や韓国のチームが比較的、楽にアジア王者を奪えるということは――
アジア野球の発展のためには、良いことかもしれぬ。