きょうの『道草日記』は――
プロ野球のディープなお話です。
*
朝日新聞の西村欣也さんが、先週――
紙面のご自身のコラムで、
と、ご見解を述べていらっしゃいました。
野球ファンの方なら、よくご存じのように――
プロ野球には2つのリーグがあります。
ところで――
7試合制で日本一のプロ野球チームを決めます。
7試合制とは、先に4勝したほうが勝者となるルールのことです。
2007年からは、クライマックス・シリーズ(CS)という準選手権大会のような大会を各リーグで行い、その勝者が各リーグの代表として日本シリーズに出場することになりました。
で――
準優勝(2位)チームである阪神タイガースでした。
現行の規定では、リーグの優勝チームは、あくまでペナント・レースの戦績で決めます。
ペナント・レースとは各リーグの正式なリーグ戦のことで、1チーム当たり約140試合の長期戦です。
――これはおかしい。
というのが、西村さんのご見解の主旨です。
正式なリーグ戦であるペナント・レースとは別に、わざわざCSという準選手権大会を行うのであれば――
その大会の勝者をリーグの優勝チームとみなすべきではないか、と――
西村さんのご見解に――
基本的に賛成です。
少なくとも今年のセ・リーグについていえば――
CSのファイナル・ステージで1勝もできなかった巨人が“セ・リーグの優勝チーム”とみなされることには、強い違和感を覚えます。
そんな結果は受け入れがたい――
それも違うような気がします。
阪神は、ペナント・レースでは、巨人に7ゲーム差で敗れているからです。
7ゲーム差というのは、勝利試合数が7つ違うことを意味します。
約140試合のうちの7つとはいえ、これは決して小さな差ではありません。
日本シリーズが7試合制であり、CSのファイナル・ステージが変則6試合制であることを考えれば、7つの差は甚大です。
変則6試合制とは――
基本的には先に4勝したほうが勝者なのですが、片方のチームにアドバンテージの1勝を与え、そのチームは実質3勝すれば勝者になる――
というルールです。
西村さんがご指摘の問題は――
CSのファイナル・ステージにおいて、ペナント・レースの1位チームに与えられるアドバンテージが小さすぎることに起因しているように思います。
たしかに、今のルールでも、優勝チームは実質3勝3敗で4勝3敗とみなされます。
その余計な「1勝」は当のプロ野球選手や監督らには十分に大きく感じられるのだそうです。
実際に、大きいのでしょう――野球の専門家の方々の感覚なので――
が――
野球ファンの感覚からすれば、そんなに大きくは感じられないのです。
プロ野球は興行です。
ファンあってのプロ野球です。
ペナントレースの1位チームには、もう少し大きなアドバンテージが与えられてもよいように思います。
そのかわり、ペナントレースの1位チームを優勝チームとはみなさない――優勝チームは、あくまでCSのファイナル・ステージの勝者とする――
それが一番スッキリするのではないでしょうか。
1位チームへのアドバンテージを適正に見積もるには――
変則6試合制のファイナル・ステージでの実質の対戦成績が下記のいずれかになることを考慮するのがよいでしょう。
ペナント・レースの1位チームからみた実質の対戦成績
括弧内はゲーム差 (勝利試合数の差に相当する)
3勝0敗 (+3)
3勝1敗 (+2)
3勝2敗 (+1)
3勝3敗 (±0)
2勝4敗 (-2)
1勝4敗 (-3)
0勝4敗 (-4)
上記によれば、ペナント・レースで4ゲーム差以上がついた場合は、CSを開催しないというルールが一番しっくりくるのですが――
それでは興行的に全く意味をなさないので――
下記のようなルールにしてはどうかと考えます。
ペナント・レースで3.5ゲーム差以上 → 1位チームの1勝でリーグ優勝 日本シリーズ進出
ペナント・レースで2.5~3ゲーム差 → 1位チームの2勝でリーグ優勝 日本シリーズ進出
ペナント・レースで1.5~2ゲーム差 → 1位チームの3勝でリーグ優勝 日本シリーズ進出
ペナント・レースで0.5~1ゲーム差 → 1位チームの4勝でリーグ優勝 日本シリーズ進出
(1位チームが4敗した時点で敗退とする。ただし、最多試合数は7とする)
僕には、かなりスッキリとしたルールに感じられます。
もちろん、このルールであっても、4.5ゲーム差以上がついた場合は、1位チームが損をする計算にはなりますが――
そこは興行的な意味を考え、甘受するのがよいでしょう。
つまり、
――ペナント・レースの1位チームとのゲーム差は、3.5も10も一緒である。
との了解が要請されることになります。
このようなルールにすれば――
当然のことながら、
――最多試合数は7なのに、わずか1勝でも勝者になりうるとは、1位チームが有利すぎる!
と呆れる方もいらっしゃるでしょう。
が――
頭に入れておくべきことが2つあります。
1つは、一見フェアでない勝負にみえても、ペナント・レースの戦績が加味されるという点では、十分にフェアである、ということ――
もう1つは、たとえフェアでない勝負でも、野球ファンの感覚からすれば、決して面白くないわけではない、ということです。
フェアでない勝負には、フェアな勝負には感じられない醍醐味があるのです。
日本シリーズはフェアなのですから――
CSのファイナル・ステージは、思いっきりアンフェアでもよいのではないでしょうか。