仙台の今年の冬は、雪がない。
だから、皆で、
――良かった、良かった。
と笑みをコボしあうのだが――
ここにきて、そうもいっていられなくなった。
暖冬の傾向のハッキリしてきたことが、気がかりである。
雪はイヤだが――
寒くならぬのも、またイヤなのである。
相応に寒くならぬと、何やら不吉な予感がする。
昔から、
――天候の不順は深刻な天災の前触れだ。
などというからだ。
「そのうち、でっかい地震でも、くんじゃねすか」
と、顔見知りのタクシーの運転手さんが笑った。
笑ったが――
一抹の不安は隠せぬ。
誰だって、深刻な天災はイヤだ。「でっかい地震」よりは、寒い冬――雪だらけの冬――がよい。
そういえば――
僕が仙台にきた次の年は、今年のような暖冬になった記憶がある。
寒くなく、雪もなかった。
その頃の僕は、例年の仙台を知らなかった。
だから、
(仙台でも、こんなもんか)
と思ったりした。
その年――
天災が起こった。
阪神淡路大震災である。