母と電話で話をすると――
すぐに口論になる。
母のイヤなところが、すぐに気になってしまうからだ。
母のイヤなところは――
僕自身のイヤなところでもある。
だから、いっそう我慢が難しい。
世の中には――
赤の他人には、決まって優しく穏やかなのだが――
親しい身内には、なぜか決まって怒鳴り散らす人というのが――
いるそうである。
(不思議な人がいるもんだね~)
などと、ノン気に思っていたのだが――
なんてことはない。
僕自身が、そんな風になりつつある。
母と深刻な話をするときは、いつも――
声がトゲトゲしくなってしまう。
抑えがたい。
困ったことだ。
こんなことでは結婚できないぞ。
*
ちなみに、僕は独身である――
念のため――
*
僕は、自分の妻にあたる人だけには、絶対に怒鳴りたくないと思っている。
かりに、怒鳴り散らされても――
怒鳴り散らし返したくはない。
怒鳴り散らすための結婚などは、絶対にイヤだ。
――そんなの無理だね~、母親を怒鳴り散らすような息子にはね~。
というような声が、きこえてきそうだが――
まあ、それは、その通りなのだが――
それでも、やはり――
そう思う――
妻にあたる人を、僕は絶対に怒鳴りたくはない、と――
怒鳴ってしまいそうな人とは、絶対に結婚したくない。
そういう人とは結婚する相性にはなかった、ということだ。
だって――
そのほうが、お互いのためでしょう?