ここ数日、仙台は底冷えがする。
明らかに――
2月よりも寒い3月である。
今日、タクシーに乗ったら、
「今年はタイヤの減りが早くてね」
と、運転手さんにいわれた。
「タイヤ」とはスタッドレス・タイヤのことである。
その磨耗の程度が、例年よりも酷い、ということであった。
スタッドレス・タイヤは雪や氷の上を走るからよいのであって――
ふつうのアスファルトを漫然と走り続けていたら、たちまちのうちに磨耗してしまうものらしい。
だから、
「今年、タイヤを買い替えた人は大損でしたね」
と、その運転手さんは笑った。
ちなみに――
タイヤの減り具合を確認するために、プロはどうしているかというと――
「私は実際に滑っています」
と、運転手さんは説明してくれた。
車庫の中で、凍った路面をみつけ――
周囲の安全を確認しつつ――
わざとブレーキを強く踏んでみて――
どれくらいの強さまでならスリップしないかを、丁寧に確認するのだという。
「そのときの感触で、その日のブレーキのタイミングとか車間距離とかを決めています」
と――
「ほお。さすがにプロは違いますね」
と、僕が応じると――
運転手さんは慌てて首を振った。
「いや。私は、そうやってるというだけで、皆が、そうやってるかはわかりませんよ」
「あ、そうなんですか」
「たぶんね」
そりゃ――
そうだろうな。
真のプロは――
自分の基準をもっている。
他人に基準に合わせたりは、なかなかしないものである。