人間は自然物だと思っている。
その証拠として、僕が第一に挙げたいことは――
死だ。
人間は死ぬ存在である。
しかも、予期せぬ形で、ある日、突然に死を迎える――
少なくとも、そうなることが多い。
ときどき、
――がんで死ぬのは、そんなに悪くない。
などと、いわれるが――
それは、がんによる死が、さほど突然ではないからである。
準備期間が、それなりに残される。
が、通常は――
死は突然である。
人知を越えた叡智が司る――司っているようにみえる。
人間を自然物とみる――もう一つの根拠は――
恋である。
人間は恋をする。
幾つになっても、いきなり恋をする。
ある日、突然、誰かのことが知りたくなって――
その後、いつまでも一緒にいたくなったりする。
ときに、
――計画された恋
というのが、あるそうだが――
そんなものは世の人々の失笑をかうだろう。
とうてい本物の恋とは呼べないからだ。
恋もまた――
人知を越えた叡智が司っている――そのようにみえる。
*
だから――
自然物としての人間を色濃く描き出そうと思ったら――
恋に死を絡めればよい。
とりあえず――
鮮烈にして端正な夢物語を、紡げることだろう。