マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

呉京燮さんのお別れパーティ

 呉京燮(ごけいしょう)さんのお別れパーティに行ってきた。
 今年の1月17日の『道草日記』で触れた呉京燮さんである。
 通称、ケイさん――在米韓国人の御両親をもち、僕より10歳くらい年下の男性だ。

 仙台にきて2年だそうである。
 その間、ずっと英会話学校で講師を務めていた。

 この度、職を辞すことになったので、職場の学校が、お別れパーティを開いた。

 その英会話学校には、僕も長らく通っているので――
 ちょっと無理をして顔を出してきた次第である。

     *

 講師をやめるという話は、1ヵ月ほど前にきいた。

 ――なぜ辞めるのか?

 との問いに、屈託のない笑顔で答える。

 ――僕は、あまりいい先生ではないから――

 と――

 ケイさんは日本語が上手である。
 英語に困っている受講生をみていると、つい日本語で助け舟を出してしまう。
 それが受講生の上達を妨げている、ということかもしれない。

 今日も同じようなことをいっていた。
 後任の講師をさし、

 ――僕よりも格段に優れた先生だ。

 と評した。

 ニコニコ笑いながら話すので、どこまで本気かはわからない。

 が、彼は、いつもニコニコ笑っているので、たぶん本気だろうと思う。

 ――そんなことはない。

 と僕はいった。

 ――You have different good points.(あなたには違う良さがある)

 と――
 僕はケイさんより年上なので、つい、そういう言葉が出た。

 ケイさんの良さは、受講生の学ぶ意欲を保つ点にある。

 優秀とみなされる講師は、しばしば受講生の意欲を奪う。
 良かれと思い、厳しく接しすぎる――の愚を犯す。

 そういう暗さが、ケイさんにはない。

 教育の現場には欠かせぬ人材だ。

     *

 僕より10歳くらい年下だと思っていた。
 実際は、6歳の年下だ。今年で28歳になるという。

 だから――
 辞める理由は他にもあるだろう。

 28歳なら、いろいろ考える。

     *

 まだ、1、2年は仙台にいるそうだ。
 以後半年は貯金だけで暮らしていく。
 日本語を学ぶ傍ら、子供向けの小説の原案を練るらしい。

 英語での出版を予定している。

 首尾よく出版にこぎつけたら僕に知らせろ、といってある。
 日本語版の翻訳は僕がするから、と――

 カラカラと笑って承諾してくれた。