夕べのプールサイドに、突然、猟銃を持った男が現れるとは――
ふつう思わない。
もちろん――
その男が猟銃をぶっ放し、その弾に当たって命を落とすとは――
ふつう思わない。
長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件のことである。
先週の金曜日の夜に起こった。
この事件の死者は2名だそうである。
うち一人は20代の女性の方で、事件現場のスポーツ・クラブで水泳のインストラクターを務めておられた。
その女性のお父さんが、葬儀・告別式で挨拶をされたそうである。
――娘の死を無念の死とは思わないで下さい。
と――
水泳を指導していた子供たちの命を守って死んだのだから、無念の死ではありません、と――
報道機関が伝えるところである。
その気持ち――
よくわかる気がする。
残された家族は――
死者が苦悶のうちに死んでいったとは、できれば考えたくないであろう。
突然の非常時に、なすべきことをなし――
ある程度の達成感を得た上で死んでいったのだと――
考えたいものである。
それが自分の娘となれば、なおのことであろう。
それにしても――
人は、実に簡単なことで息絶えてしまう。
突然のハプニングに巻き込まれ、あっさり死んでしまいうる。
人世は不条理だ。
ちなみに――
長崎の佐世保のスポーツ・クラブで凶行が発生していたとき――
僕は、東京の池袋で辛島美登里さんのコンサートを楽しんでいた。
同時刻に、はるか西方で、そんな惨劇が起こっていようとは――
夢にも思わなかった。
おそらく――
コンサート会場に居合わせた全ての人が、そうであったろう。
人世の不条理の暴虐性が――
不要なまでに際立った。