人間の攻撃性というのが、僕の文筆のテーマの一つなのですが――
より正確には――
人間の攻撃性に対して攻撃を挑む人間たちが、僕の文筆のテーマなのです。
例えば、国家が戦争に突き進もうとしているときに、その流れを食い止めようとして必死になる人間たちが、テーマです。
国家の中枢にあって戦いを主導する要人たちに闘いを挑む人間たちの物語――
「戦い」に「闘い」です。
この矛盾――
もう、どうしようもない――(笑
ですが――
どうしようもない矛盾があるからこそ、文筆のテーマになりうるのです。
人間の攻撃性は、おそらく、人間が地球上で繁栄を極めるための必要条件でした。
人間が他の種を圧倒したのは、その攻撃性に負うところが多かったことでしょう。
が――
その攻撃性に縛りをかけ損ねるとき、人間は滅ぶのかもしれません。
いわゆる東西冷戦期における核戦争への懸念などは、その可能性が顕現した事例の典型でした。
人間をして種の王者にならしめた性質でありながら、常に、自己の生存を脅かし続ける性質――
その人間の愚かしくも痛々しい属性を――
僕らは、どのように理解し、そして、対処していくべきなのでしょうか。
いや――
理解する必要はないのかもしれません。
ただ向き合うだけでよい――
対処の仕方は、個人によって違うに決まっているのです。
文筆は問題の解決ではなく、その手がかりを供しうるにすぎません。