マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「戦いをやめろ」といいながら

「戦いをやめろ」といいながら、戦いを挑む――

 これから戦おうとする者たちに対し、その戦いをやめさせるべく、戦いを挑む――

 例えば――
 ある国の大臣が暗愚の元首をそそのかして隣国に侵略戦争を仕掛けようとするのを――
 その国の将軍が軍事クーデターを起こして阻止をしようとする――

 ……

 ……

 この矛盾は――
 しばしば物語の主題などに取り上げられ、それなりの叙情詩に仕上げられることもありますが――

 人が抱えうる矛盾としては、
(ひどく深刻だ)
 と――
 僕は感じます。

 いやしくも「戦いをやめろ」というからには――
 自らは決して戦いを挑んではならないはずです。

 にも関わらず――
 戦いを挑もうとする――

 それは――
 あからさまな二枚舌といえましょう。

 ……

 ……

 が――

 この矛盾に気づかずに――あるいは、気づいていながら、あえて確信犯的に――「戦いをやめろ」といいながら、戦いを挑む人たちがいます。

 そういう人たちは――
 きっと、こう考えるのでしょう。

 ――他に方法はない。仕方がないではないか。

 と――

 ……

 ……

 たしかに、その通りで――
 他に方法はないかもしれません。

 が――

 それでも、他に方法を考えていく――
 あるいは――
 戦いを挑まずに戦いをやめさせうる方法を、最期まで諦めずに探し続けていく――

 その覚悟を決めないと――
 人は、なかなか本気では「戦いをやめろ」といえないのではないか――

 そう思います。