物事を詳細かつ厳密に考える楽しみというものがあります。
例えば、
――「構造」と「形態」との違いは何か?
といった疑問点について考える楽しみです。
どちらも「かたち」を示す言葉ですが、これらが完全に語意をもちうるかといえば、そんなことはなく――
「多重構造」といったりはしますが、「多重形態」といったりはしませんし――「雇用形態」といったりはしますが、「雇用構造」といったりはしません。
もちろん、「多重構造」や「雇用形態」が絶対的に正しいというのではなく――また、「多重形態」や「雇用構造」が完全に誤用であるともいえないですが――
少なくとも、「多重構造」と「多重形態」とではニュアンスが異なりますし、「雇用形態」と「雇用構造」とでは意味が多少はズレてきます。
僕の理解では――
「形態」とは、純粋に形の有様を指し、「構造」とは、形の有様とその形がもつ働きとの組み合せを指します。
したがって、「多重形態」といわれれば、単に形のある物が折り重なっている有様を思い浮かべることになり、「雇用構造」といわれれば、雇用関係の有様を雇用者や被雇用者の働きに絡めて思い描くことになります。
つまり、「多重形態」は言葉の響きの割には淡白な意味しか示しえず、「雇用構造」は逆に濃密すぎる意味を示してしまうのです。
以上は、あくまで僕個人の理解であって――
唯一絶対の正解などではありません。
だいたい、唯一絶対の正解なんて、通常は、誰にもわかりませんからね。
「唯一絶対の正解」を目指し、詳細かつ厳密に考える――
そのことの試行ないし過程が、面白いのです。