今までに何となく思っていたことをズバッと人からいわれて、
(あ、それって、オレがいいたかったことなんだよ)
と思うのは自然なことですが――
今までに思ってもみなかったことをスパッと人からいわれて、
(あ、それって、オレがいいたかったことなんだよ)
と思うことがあります。
それは、その「思ってもみなかったこと」が、一瞬で納得できた場合です。
例えば、
――不作法は周囲を不快にさせるからではなく、自分を不快にさせるからいけないのだ。
といわれたとしましょう。
いわれた当人は、そんなことは一度たりとも思ったことはなかったのですが、実際にいわれたところ、
――その通りだ!
と瞬間的に合点がいってしまったとします。
そのときに、その人は、
――それは前々から自分がいいたかったことなんだ。
と錯覚をしてしまう――
そういうことがありうるだろうと、僕はいいたいのです。
「一瞬で納得できた」ということは、少なくとも無意識のレベルでは以前から考えていたことでしょうから――
つい、そのような錯覚に陥ってしまうのもムリのないことなのですが――
まあ、そのような理屈は――
この際、どうでもよいのですね。
僕ら人間の頭は意外にイイカゲンにできている、ということを――
僕らは、もう少し気ままに楽しんだほうがいいように思います。
自分の考えが次々と他人の考えに化けていく様子や、他人の考えが自分の考えとして化けて出る様子は――
それなりに面白いでしょう。