自分の心は自分が一番わからないのでしょうね。
自分の顔は自分が一番わからないように――
もし、この世に鏡がなければ――
自分の顔は相当にわかりづらいでしょうね。
水面に映った自分の顔をみながら、
――だいたいこんな感じか?
などと思い描くより仕方がない――
先史時代の人々は多分そうやって自分の顔を頭に入れていたのです。
心を映す鏡はありません。
少なくとも鏡ほど鮮明に映すものはありません。
あるのは――
せいぜい水面が自分の顔を映す程度に自分の心を映すもの――
それは、他人の言動です。
あるいは、他人の顔色とか――
……
……
他人の言動や顔色をみて自分の心を推し量る――
そういうものだと思っております。