学校教育や家庭教育の文脈で、
――本番に強い子、弱い子
という言い方がされますね。
「本番に強い子」というのは、テストや発表会で実力通りの結果を残す――ときには実力以上の結果を残す――
「本番に弱い子」というのは、実力未満の結果に終わってしまう――
たしかに、実力を発揮できる子とそうでない子とがいるのはわかります。
が――
子供のうちから「本番に強い」とか「本番に弱い」とかのレッテルを貼ってよいものでしょうか。
というよりも――
子供のうちから、そんなセンスの有無が、わかるものでしょうか。
「本番に強い」というのは、
――事象の一回性に敏感である。
ということでしょう。
きょうの今この時は今のこの時にしかない、ということを十分に弁え――
その機会を十分にかつ確実に活かせるかどうか、ということです。
そういう機会に直面しても、平常心を失わずに済むかどうか、ということです。
一回性の有り難みや面白さや幸福感は、ある程度の人生経験を積まなければ、わかるようにはならないでしょう。
それまでの暮らしのなかで、一回性について、何度も失敗を繰り返しているからこそ、わかる側面というのがあります。
そういうセンスを子供のうちから求めることは――
ちょっと無理があるように思います。
「本番に強い子」というのは、大人から評価されることに「強い」というだけのことでしょう。
子供の時分のテストや発表会というのは、一回性を味わう場というよりは、大人から成績を評価される場でありましょうから――