絵画や写真の良さは、全体を一瞬で見渡せるということですね。
小説や音楽では、そうはいかない――
ある程度の時間をかけて、全体を把握する――
しかも、「把握する」であって「見渡す」というわけにはいきません。
小説家や音楽家の意図を理解するには、とにかく時間がかかるのです。
が――
絵画や写真の場合は、違う――
画家や写真家の意図を一瞬で理解できる――
少なくとも表面的には一瞬で理解できます。
この「表面的には」がポイントかもしれません。
表面的な理解なら、たしかに一瞬なのですが――
深層的な理解なら、そうはいかない――
やはり、時間がかかる――
見方を変えると、
――深層的な理解には十分に時間をかけることが許される。
ということです。
絵画や写真の場合には、表面的な理解へ一瞬で到達し――
次いで、深層的な理解へは、ゆったりと到達することが許される――
絵画や写真の最大の利点は、作品へのアプローチを2段階にわけられるところにあるのではないでしょうか
この2段階アプローチが可能なのは、
――全体を一瞬で見渡せるから――
です。
小説や音楽では、そうはいかない――
2段階アプローチは難しい――
そういうことです。