言葉は文脈によって正確な意味が定まります。
同じ言葉であっても、文脈が違えば、異なる意味を担います。
例えば、
―ーたった26種類の文字の組み合せだけで単語が構成されているというのが、英語の基本だ。
という場合の「基本」と、
―ー結論を先に示し、そのあとで根拠を示して論証を組み立てるというのが、英語の基本だ。
という場合の「基本」とは別の意味ですね。
前者の「基本」は、「言語の根源的な規則」くらいの意味です。
後者の「基本」は、「言語圏の長年の慣習」くらいの意味です。
文脈をとらえずに意味を理解しようとすると――
必ず言葉を誤解します。
言葉の意味を追求しようと思ったら――
まずは文脈をとらえなければなりません。
ところが――
その文脈をとらえるのが難しいのですね。
文脈というものは曖昧で、個人によって、その内実や印象は異なっている、というのが普通です。
文脈は、自分本位にとらえても、仕方がないのですね。
誰かと共有して初めて意義が生じます。
ですから――
2人以上の人が集って何か議論をするときに、なすべきことの大半は、実は文脈の共有なのですね。
もし、文脈を共有することなく言葉の意味について議論を始めたら――
それは、互いに挙げ足を取りあうような口ケンカとなります。