きのうの民主党の代表選挙では――
野田佳彦さんが決選投票を制され、きょうの国会で内閣総理大臣に指名されました。
僕が、野田さんのお名前を最初に知ったのは――
野田さんが民主党の代表選挙に初めて立候補されたときでした。
ネットで調べたら、2002年のことでした。
当時の民主党は野党です。
政権交代は夢のまた夢――全く現実味を帯びていませんでした。
そういう時勢での代表選挙で、しかも野田さんは有力候補ではありませんでしたから――
メディアは積極的には取り上げなかったと記憶しています。
このときになって初めて野田さんのお名前を知ったくらいですから――
今回の代表選挙で立候補のご意志が報じられたときも――
その政治手法や政治思想はもちろんのこと、
――だいたい、こんな感じの人
といった漠然としたお人柄さえも、見当もつきませんでした。
きのうのTVニュースの街頭取材で、野田さんのお顔の写真をみせられ、
――この人、だれ?
と聞き返している人がいましたけれど――
僕も大差はありません。
一見、融通の利かない強面の人にみえます。
が――
TVの討論会などでの受け答えはソフトです。
人柄が評価され、政府内の官僚や党内の議員らに人望があるといいますが、
(なるほど……)
と思わせます。
僕が最も驚かされたのは――
ユーモアのセンスです。
(ええ~! 野田さんって、こんな風にユーモアを使う人だったんだ)
と――
代表選挙の演説で、ご自分の容姿は見栄えがしないと自虐ネタを口にされ――
だから、民主党の代表になっても支持率は上がらないと自嘲され――
だから、総理大臣になっても国会は解散しないと宣言をされましたが――
自虐から話を起こして国会の解散権に言及しても、ほとんどの人が真には受けないでしょう。
――あの人は自分の容姿に自信がないようだから、総理になっても解散権は行使できないだろう。
で納得する国会議員は一人もいないに違いありません。
が――
そうはいっても、
(もしかしたら本当に行使しないのかも……)
と思わせる説得力があるのですね――いや、「説得力の欠片(かけら)」みたいなものが――
ユーモアに絡めた言及だから「そうかも……」と思わされてしまうのです。
もし、これが手の込んだ技巧的なウィットであったりしたら――
説得力は欠片もありません。
ユーモアに包んで「説得力の欠片」をふりまくセンスは、政治家には貴重な資質です。