先日――
何気なくTVをみていたら、
(面白いな~!)
と感じるCMに気づきました。
大企業のオフィスで――
瑛太さん演じる「若手社員」が、矢作兼さん演じる「中間管理職」に、
――仲間が頑張っているのに、放っておけないでしょう?
と詰め寄ると、
――そうだね~。でも、それファイナル・ファンタジーの話だよね~。
と諭されて、
――まあ、そうですけど……。
と口ごもるというシーン――
ご存知の方が多いと思います。
DeNA社の「モバゲー」のCMです。
このあと、遠藤憲一さん演じる「部長」が登場し――
「若手社員」だけでなくて、この「部長」も同じゲームをやっていた――
というのが、このCMのオチなのですが――
僕が「面白いな~!」と思ったのは、そのオチのことではありません。
矢作さんの演技です。
おそらく、この「中間管理職」は、仕事中にゲームをやっていた「若手社員」を見咎め、自席に呼んだのです。
そして、「仲間が頑張っているのに、放っておけないでしょう?」と、あたかも開き直ったかのような釈明を受ける――
ふつうの上司なら、「それはゲームの話だろう!」と安易に一喝するところです。
が――
矢作さん演じる「中間管理職」は、違うのです。
まずは、「そうだね~」と、軽く相槌を打ち――
そして、わずかに間を設けた上で、「でも、それファイナル・ファンタジーの話だよね」と、穏やかな口調で語りかける――
(これは巧い!)
と思いました。
若手社員に向かって非を指摘する上司の対応としては、これ以上にないくらいに巧いと思います。
「そうだね~」と、それに続く「でも」がよいのです。
この「そうだね~」と「でも」が醸し出す“間”とによって、この「中間管理職」は「若手社員」の感情を受け止めています。
その上で、「若手社員」の矛盾を無理なく指摘する――
サービス業や教育現場の研修などでは、しばしば相手の感情を受け止めることの大切さが説かれるのですが――
このシーンでは、これ以上ないくらい見事に感情を受け止めています。
もし、「そうだね~」と「でも」の“間”とがなかったら、どうでしょうか。
*
「仲間が頑張っているのに、放っておけないでしょう?」
「それファイナル・ファンタジーの話だよね~」
*
これでは、「若手社員」の矛盾を指摘する言葉が、ただの嫌味にきこえてしまうのですね。
この「中間管理職」は――
そう遠くない将来に、あの「部長」を飛び越え、重要な役職に抜擢されることでしょう。
が――
本当にすごいのは――
矢作さんの演技です。
まったく力みのない、ごく自然なお芝居に――
軽妙なおかしみすら覚えます。
おそらくは――
実生活においても、矢作さんは、同じような受け答えをされるのでしょうね。