自分のことをより良く見せようと思っても――
まあ――
結局は、損をするでしょうね。
より良く見せるのも技術ですから――
センスや経験が、ものをいいます。
そのようなセンスに恵まれていて、かつ、そのような経験を十分に積んでいて、自分をより良く見せる技術をすっかり体得しているような人は――
自分をより良く見せることに慣れていて、そのメリットだけでなく、デメリットについても、十分にわかっている――
よって――
いたずらに自分のことをより良く見せようとは思わない――
が、一方――
自分をより良く見せようと思う人は――
自分をより良く見せることに慣れていないので、そのデメリットにもピンとこず――
いたずらに自分のことをより良く見せようと頑張ってしまう――
そうやって頑張って得られる果実は――
思ったよりも酸っぱいものなのです。
……
……
ところで――
自分をより良く見せようと思うことのデメリットとは、何か――
簡単です。
実際以上に良く見せたことが――
あとでプレッシャーとなって自分自身に跳ね返ってくることです。
例えば、財布の中の5000円札を、10000円札にみせかけておいて――
9800円の商品の勧誘を断るのは、けっこう大変だろうと思うのです。
無難に取り繕うプレッシャーから解放されるには、
――ごめん! 実は5000円しか持ってない!
と白状するしかないでしょう。