女優さんというのは――
概して、
――舞台に立ったら隙を見せず、舞台を降りたら姿を隠す。
そういう女性だろうと思います。
“舞台に立ったら隙を見せず”というのは――
舞台の上では芝居をしているからであって――
もちろん、演じる役柄によっては、隙を見せたような表情や仕草をするわけですけれども――
それだって、あくまで芝居のうちですから――
実際には――
何一つ隙を見せていないことになります。
とはいえ――
いくら舞台の上で隙を見せない女優さんであっても――
舞台の袖では、どうしても隙を見せてしまう――
人である以上、それは致し方のないことです。
よって、女優さんの多くは、舞台を降りたら自身の姿そのものを隠そうとします。
姿を隠せば――
隙を見せる心配も要りませんので――
なぜ、そうまでして隙を見せようとしないのか――
もちろん――
舞台を見に来るお客さんの夢を壊さないようにです。
が――
そうした配慮は、時に、
――逃げ
と、とられることがあります。
だからでしょう――
女優さんたちの中には、舞台を降りたあとも、まったく自身の姿を隠そうとしない方がいます。
そういう女優さんは、舞台に立つ時はもちろんのこと、舞台を降りたあとも、まったく隙を見せようとしません。
おそらくは、
――逃げたくない。
という強気の思いが、そうさせるのでしょう。
その思いを、今、
――女優魂
とでも呼びましょうか。
この“女優魂”は――
見せ方をひとつ間違えると――
少なからず下品に見受けられるものです。
ですから――
ちょっと厄介なのですが――
中には――
まったく下品に見えない女優さんもいらして――
(不思議だ……)
と、深く感銘させられることがあります。
おととい亡くなられた川島なお美さんは――
少なくとも僕にとっては――
そういう女優さんでした。