マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

媚びる女

 ――媚びる女

 は――
 男にとっては警戒の対象ですが――

 もし、その媚び方に明らかなウソがあれば――
 それは、ありがたくも味わい深いものに感じられるでしょう。

「媚びる」というのは、

 ――対等な相手ないし目下の相手に対し、何か下心があるために、その相手を褒めたり優遇したりして喜ばせる。

 という意味です。

 なぜ人は媚びるのかといえば――
 下心があるからですよね。

 相手の利益をかすめとったり、相手に損害をおしつけたりしようとする下心です。

 ウソのない媚び方では、下心にもウソがないので――
 現実に利益を奪われたり損害を被ったりする可能性を真剣に心配しなくてはなりません。
 
 が――
 明らかにウソのある媚び方では、下心にも明らかなウソがあるので――
 そのような心配はいりません。

 そういう媚び方の典型は――
 女優さんが観客を相手に媚びてみせるお芝居でしょう。

 媚びている相手が演技をしている女優さんであれば――
 一切は虚構――つまり、ウソ――ですから――
 現実に利益を奪われたり損害を被ったりする可能性は、まったく考えなくてよいわけですよね。

 そうすると――
 その女優さんの媚びる表情や仕草や口調を存分に感じとることができるわけです。

 芸達者な女優さんが、徹底的に、念には念を入れて、媚びているお芝居には――
 一見の価値がありますよ――少なくとも男の観客にとっては――