マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

ネットがなかった頃のことを巧く説明できない

 僕は1970年代の生まれで――
 僕の両親は1940年代の生まれです。

 よって――
 今から30年前の1985年頃――
 僕は小学生でした。

 この頃――
 よく両親にいわれていたことは、
「今はテレビがあるから、世の中は、私たちが子供だった頃とはスッカリ変わってしまった」
 というものでした。

 それから30年が経ち――
 今度は僕らが、
「今はネットがあるから、世の中は……」
 という番になりました。

 小学生であった僕は――
 テレビがなかった頃のことを、まったく想像できませんでした。

 なので、
「ねえ、テレビがなかった頃って、どんなだったの?」
 と両親に繰り返し訊いた記憶があります。

 が――
 僕を満足させるような返事はありませんでした。

 たぶん、両親は巧く説明できなかったのだと思います。

 翻って――

 今の小学生は――
 ネットがなかった頃のことを、まったく想像できないでしょう。

 なので、
「ねえ、ネットがなかった頃って、どんなだったの?」
 と訊くことが、あるかもしれません。

 が――
 そんな小学生を満足させるような説明を、僕はする自信がありません。

 もちろん――
 ネットがなかった頃のことを決して忘れたわけではないのですが――
 その頃のことを巧く説明しようと思っても、なかなか巧く説明できないのです。

 テレビがなかった頃のことを巧く説明できなかった両親の気持ちが――
 今はよくわかります。

 そういえば――
 僕が子供だった頃、父は、よくいっていました。

「人間は、便利なものには、すぐ慣れる」
 と――

 父のいう「便利なもの」とは、自動車、電話、炊飯器、洗濯機、クーラーなどでしたが――
 おそらく、テレビも念頭にあったでしょう。

 今の僕なら、ネットも念頭に置きます。