――AがBであることが証明されれば、Cを行わない。
と、
――AがBでないことが証明されれば、Cを行う。
とは――
一見、同じような内容の文章に読めますが――
自然科学的な見地になじむのは、2つめの文章のほうです。
AがBでないことの証明のほうが、AがBであることの証明よりも、いくらか容易だからです。
自然科学的には――
AがBでないことを証明するには、まずはAがBであることを仮定し、その仮定に矛盾するような知見を、実験や観察の結果から導き出せばよいのですが――
AがBであることを証明するには、まずはAがBでないことを仮定する必要があるのですね。
ところが、「~でないこと」を仮定するのは、非常に難しい――
例えば――
クジラが哺乳類であることを仮定するのは、比較的に単純かつ明瞭ですが――
クジラが哺乳類でないことを仮定するのは、そうではない――
クジラが爬虫類や両生類や魚類や鳥類であることを仮定する必要があるからです。
要するに、「B」に単純で明瞭な概念が当てはまるのであれば、証明は至極やりやすい――
ということなのですね。
*
報道によれば――
本日、原子力規制委員会は、
――日本原子力発電・敦賀原発2号機の直下の断層が活断層でないとはいえない。
との結論を出しました。
一連の議論で最も着目するべきは――
原子力規制員会が、従来の「活断層であると証明されれば、再稼働は行わない」という発想を捨て、「活断層でないことが証明されれば、再稼働を行う」という発想を採ったことだそうです。
試みに――
以上の議論を上記の雛形に当てはめてみると、
A:日本原子力発電・敦賀原発2号機の直下の断層
B:活断層
C:同2号機の再稼働
となります。
もし、「活断層の否定」の概念が――つまり、「活断層とはいえない断層」の概念が――「活断層」と同じくらいに、単純かつ明瞭に確立されているのなら――
その概念を「B」に当てはめることもできるのですが――
ちょっと、なさそうなのですよね――そのような概念が――
少なくとも門外漢の僕には、ネットで軽く検索したくらいでは、まったくわかりませんでした。
つまり――
今回、原子力規制委員会が「B」に当てはめた概念は、自然科学的には、かなり穏当ではないか――
ということです。
そのような意味で――
原子力規制委員会の態度は、きわめて自然科学的だと感じます。