欲望を満たすということを――
バネの喩えで表すと――
それは――
伸びているバネを自然長に戻すことなのか――
それとも自然長のバネを伸ばすことなのか――
ときどき――
それがわからなくなるのです。
もちろん――
ふつうに考えれば――
伸びているバネを自然長に戻すことなのだと思いますが――
でも――
人の欲望というものは――
キリがないのですよね。
欲望は、それを満たせば満たすほどに――
さらに高まっていく――
ですから――
バネの喩えでいうところの「バネが自然長に戻るとき」というのは――
実は、欲望を満たすときではなくて――
欲望を満たすことに厭きてしまったときではないか、と――
抱いていた欲望それ自体を忘れてしまったときではないか、と――
ときどき――
ふと、そんなふうに思うのです。