3年前の記憶と5年前の記憶とが交錯した――
というようなことがありまして――
「交錯した」とは――
5年前の記憶が3年前の記憶よりも、新しいと感じられてしまったとか――
3年前の記憶が5年前の記憶よりも、古く感じられてしまった――
といったことです。
僕は今41歳ですが――
3年前の記憶と5年前の記憶とが、なぜ交錯したのかを考えてみますに――
おそらく――
年齢のことを意識しなくなったからでしょう。
「年齢のこと」というのは――
自分の年齢だけでなく、周囲の人たちの年齢も……です。
30歳を過ぎたあたりまでは――
自分の年齢も周囲の人たちの年齢も、ずいぶんと気にしていました。
(僕もとうとう30代になってしまった。僕の20代は永遠に帰ってこないのだ)
とか、
(あの人は僕よりも3つ年上であり、この人は僕よりも2つ年下であり……)
などということを、しょっちゅう気にしていました。
が――
35歳に近づいた頃から、
(もういい! 気にしない!)
と決めたのですね。
その理由は――
実は、よく覚えていないのですが――
ただ、
――歳を気にすることで若返られるものなら、いくらでも気にするけどさ……!
という開き直りが背景にあったことは覚えています。
たぶん、
――人は皆、平等に歳をとっていく。50代になる前に30代を経験しない人はいないし、自分だけ早めに歳をとっていくとか、自分だけ遅めに歳をとっていく、ということもない。
ということを強く意識した結果ではなかったかと想像します。
自分が30代であろうが50代であろうが、気にしない――齢を平穏無事に重ねていければ、誰でも50代になれるし、70代・80代・90代にもなれる――
相手が自分より年上だろうが年下だろうが、気にしない――年上の相手は何年たっても年上で、年下の相手は何年たっても年下である――
そういうことを強く意識した結果――
事象の記憶と、その時の自分の年齢とが、正しく結びつかなくなっていったのだと思います。
それは――
決して不快なことでも不安なことでもありません。
むしろ爽快で安寧なことかもしれません。