人間には――
いいところとヤなところとがありまして――
その気になりさえすれば――
いいところだけをみることができ――
あるいは――
ヤなところだけをみることもできるのですが――
人間を本当に理解したいと思うのなら――
そのどちらも、みていないといけませんね。
人間のいいところだけをみていたら、人間を買い被るし――
人間のヤなところだけをみていたら、人間を見損ないます。
そのような存在が人間ですから――
例えば――
ある人物を真に称讃しようとしている書籍などを読んでみますと――
そこには必ず、その人物のヤなところも書いてある――
あるいは――
ある人物を真に非難しようとしている書籍などを読んでみますと――
そこには必ず、その人物のいいところも書いてある――
そのようにして巧く記述の均衡を保つことで――
その人物の評価を“真の称讃”あるいは“真の非難”たらしめているのです