――零(「0」)
という概念は――
それを当たり前と思って使っていると――
これ以上ないくらいに、
(当たり前)
に思える概念ですが――
ひとたび、
(「零」って何だ?)
と考え始めると――
とたん不思議な概念に思えてきます。
このことを僕が最初に意識したのは――
平成23年(2011年)3月下旬頃でした。
この頃――
職務の関係上――
どうにか交通機関が復旧したあとも、しばらくは被災地を離れられなかったのですが――
その際に、
――被災○日目
という表記を、職務上、たびたび目にしました。
例えば、「3月11日」は、「被災1日目」でした。
「3月15日」は、「被災5日目」――「3月20日」は、「被災10日目」――「3月31日」は、「被災21日目」――「4月1日」は、「被災22日目」でした。
こういう表記を繰り返しみているうちに、
(もしかして、「被災0日目」って、「3月10日」なわけ?)
と思うようになりまして――
津波で流されずに済んだカレンダーをみては
(そうか~)
と、深く感じ入ったことが思い出されます。
この「3月10日」は、おそらく――
東日本大震災で被災した多くの人たちにとって、当時、特別な意味合いをもっていました。
すなわち、
――こんな大災害が自分たちの身にも降りかかるとは夢にも思っていなかった日々のうちの最後の日
といった意味合いです。
(たしかに「被災からどれくらい経ったか」という尺度でみたら、「3月10日」は、まさに「無(=0)」だよな)
などと思ったものです――3月10日の時点では、あす自分たちが被災するなど、想像だにしていなかったわけですから――
ところが――
その後、はたと思い悩むようになりまして――
(じゃあ、「3月9日」は……何?)
というわけです。
これが――
意外と難しかった――
「被災からどれくらい経ったか」という尺度でみたら、「3月10日」も「3月9日」もそれ以前も、本質的には何ら変わりがない――まったく同じなわけです。
では、「3月10日」だけでなくて、「3月9日」やそれ以前も「被災0日目」でよいのかといったら――
そんなことは決してなく――
やっぱり、「被災0日目」は「3月10日」以外にはありえないように感じられたのです。
この問題は――
結局のところ、
――「6月0日」は、「5月31日」でよいか。
という問題と一緒でしょう。
きょうは6月3日ですが――
1日前のきのうは、「6月2日」であり――
2日前のおとといは、「6月1日」であるから――
3日前のさきおとといこそ、「6月0日」である――それは、まさに「5月31日」と同じ日ではないか、と――
こうやって考えていくと――
「零」は面白くも不可思議な概念なのですが――
……
……
何だか頭が混乱してきますね。
……
……
いいか――
こんなことをわざわざ考えなくても――(苦笑