知能が高い人ほど生きる能力は低い――
という考え方があります。
例えば――
知能指数が平均を大きく上回れば上回るほどに――
健康に生き、病を防ぎ、怪我を負わないで暮らすセンスが、平均を下回る――
あるいは――
恋愛をし、結婚をし、子を授かり、子育てを進めていくスキルが、平均を下回る――
ということですね。
ここでいう「生きる能力」とは、
――生物種であるヒトとして、生存したり繁殖したりする能力
を指します。
こうした考え方は――
一見すると――
意外に思えるのですが――
よく落ち着いて吟味してみれば――
きわめて当たり前のことともいえます。
なぜならば――
知能が高いことは、決して“正常”ではないからです――少なくとも知能が低いことと同程度には“異常”とみなせます。
なぜか――
ことは――
「正常」や「異常」の定義に関わってきます。
一般に、
――正常
とは、平均や平均の周囲の事物にあてがわれる概念であり、
――異常
とは、平均から大きく外れる事物にあてがわれる概念です。
つまり――
知能が高い人も低い人も、知能の平均から外れているという意味では、どちらも“異常”なのですね。
ただし――
医学や心理学などでは、当人にとって有利に働く異常は「異常」とはみなさない――
という通念があります。
知能が高いことは、一般には有利に働くと考えられますから――
少なくとも医学や心理学では、知能が高いことを「異常」とはみなしません。
こうした通念が社会に広く流布しているので、
――知能が高い人ほど生きる能力は低い。
という考え方は意外に思われるのですが――
この考え方の根底には横たわっているのは――
おそらくは、
――知能が高いことを「異常」とみなさないのは、人類の恣意的な解釈の一つにすぎない。
という発想でしょう。